企業のYouTubeが失敗したと判断されるのは、再生数が伸びなかったときだけではありません。目的を決めずに始め、担当者が1人で抱え込み、発信が自社都合のまま続いた結果、更新が止まって撤退するという流れをたどることがあります。
この記事では、企業YouTubeが失敗する一般的な理由を整理し、始める前に経営者・役員が決めておく4つの手順にまとめます。個別の企業名は挙げず、公開されている調査データと、当社の制作現場で観察した事実を基にします。
企業のYouTubeは、何をもって「失敗」と判断されているか
YouTube運用の撤退・失敗について調べたアカシアの調査(調査機関:アイブリッジ)によると、自社でYouTubeを運用した経験がある企業のうち、62.7%が撤退・中止の経験があると回答しています。中止の判断までの期間は「3〜6か月未満」が最多で、「3か月未満」と合わせると53.2%の企業が半年以内に中止を判断しています。
半年以内にやめる企業が多い背景には、動画の効果が出るまでにかかる期間と、社内が様子を見られる期間のずれがあると当社では考えています。この期間のずれをどう防ぐかは、手順4で説明します。
撤退した企業が挙げる3つの理由
同じ調査では、YouTube運用を撤退・中止した企業に理由も尋ねています。回答が多かった順に、次の3つです。
- 営業成果に繋がらなかった(41.1%)
- 再生数が伸びず、成果が見込めなかった(39.5%)
- 継続投稿が困難だった(37.9%)
次の手順は、この3つを始める前の決め方で防ぐための内容です。
失敗を防ぐために、始める前に決める4つの手順
- 01目的とKPIを事業指標で決める再生数ではなく商談数や応募数に紐づける
- 021人に依存しない体制を決める企画・撮影・編集を分担し、確認者を立てる
- 03止まりにくい投稿ペースを決めるまとめ撮りなど、無理のない頻度にする
- 04見直す時期をあらかじめ決める始める前にKPIと期間を合わせて決めておく
手順1: 目的とKPIを事業指標で決める
最初に、リード獲得・商談化・採用・ブランディングのうち何を優先するかを決めます。優先が決まっていないと、現場は再生数を目標に動き、経営層が見る事業の指標とかみ合わなくなります。目的とKPIのすり合わせ方は、企業のYouTubeマーケティング始め方で詳しく説明しています。
手順2: 1人に依存しない体制を決める
企画・撮影・編集・投稿前の確認を、最低でも2人以上で分担できる体制にします。担当者が異動・休職しても止まらない体制かどうかを、始める前に確認します。社内と外部のどちらに何を任せるかを含めた体制の決め方は、法人のYouTubeチャンネル運用の始め方にまとめています。
手順3: 止まりにくい投稿ペースを決める
毎週の撮影を前提にすると、担当者の予定が詰まった週から更新が止まります。当社の制作フローでは、月1回・4時間の撮影で長尺4本分をまとめて収録しており、出演者が撮影のために空ける時間は月に半日です。まとめ撮りにすると、撮影のための調整が月1回で済み、更新が止まりにくくなります。
体制を立ち上げる早さも継続のしやすさに関わります。当社では、SES(IT人材)企業のチャンネルを4社同時進行で制作した際、初回撮影から約1週間で投稿を始めました。立ち上げに時間をかけすぎると、公開前に社内の熱が冷めてしまうことがあります。
手順4: 見直す時期をあらかじめ決める
先ほどの調査では、半年以内に中止を判断した企業が53.2%でした。この期間のずれを防ぐには、始める前に「いつ」「何を基準に」見直すかを決めておきます。たとえば「3か月後に投稿本数と反応を確認する」「6か月後に商談数の変化を見る」のように、期間とKPIを対にして決めます。期間を決めずに始めると、再生数が思うように伸びない時期に、感覚的な判断で撤退してしまいます。
視聴者目線に発信を変える、企画の決め方
体制が整っても、発信する内容が自社都合のままだと視聴者に届きません。当社が制作に関わるIT人材系の企業チャンネルの実測では、同じ社員インタビューの素材でも、主語を会社の自慢ではなく「視聴者の困りごとを助けた話」にした回のほうが、約6倍再生されています。
- サービスの特徴や強みが中心になる
- 社内では分かりやすいが視聴者には伝わりにくい
- 視聴者の悩みや迷いを先に言葉にする
- 解決の手がかりとして自社の知見を示す
企画の主語を変えるだけでなく、タイトルの付け方も再生に影響します。当社が制作に関わるIT人材系の企業チャンネルの実測では、再生上位の動画は、タイトルに金額・割合・年数のいずれかの数字が入っているものが大半でした。企画の方向性だけでなく、タイトルで何を言い切るかまで、投稿前に確認する項目にしておくと、発信が自社都合に戻りにくくなります。企画の型を増やしたい場合は、BtoBのYouTube成功事例で具体的な工夫を紹介しています。
内製と外注、失敗しにくい体制の選び方
1人に依存しない体制をつくる方法は、内製の人数を増やすか、一部を外注するかの2つです。内製で増員する場合は、採用と育成に時間がかかります。外注する場合は、依頼する工程によって費用が変わるため、総額だけでなく内訳を確認します。
当社の月額プランの内訳では、撮影・長尺編集・ショート制作・サムネイルを工程ごとに分けて見積もります。工程ごとの単価と、本数を変えた場合の概算は、YouTube運用代行の費用内訳にまとめています。すべてを外注せず、企画と確認だけ社内に残す分担も選べます。
採用支援企業の発信チャンネルでは、月4本ペースで長尺とショートを組み合わせて制作しています。このチャンネルは、商談時の信頼材料としても使われています。ペースと体制を始める前に決めておくほど、担当者が1人欠けても更新が止まりにくくなります。
まとめ
企業のYouTubeが失敗する理由は、動画の出来栄えよりも、始める前の決め方にあります。目的とKPIを事業指標で決める、1人に依存しない体制を決める、止まりにくい投稿ペースを決める、見直す時期をあらかじめ決める、の4つを順番に決めておくと、半年で撤退する前に打てる手が増えます。
体制や外注範囲を検討する際の概算は、見積もりシミュレーションで確認できます。撮影込みの制作代行の内容は、YouTube制作代行のページにまとめています。